あずなの思いこみI do!トーク第一幕
幕があくと向かって右側、上手のイスに礼服姿のマイケル(村井さん)、左側、下手のイスにウエディングドレス姿のアグネス(春風ひとみさん)。村井さんの一声でこの舞台は始まります。舞台奥中央の高いところにパーカッション、右に女性のピアノ、左に男性のピアノという配置。ピアノの柔らかい音の伴奏がこの舞台の雰囲気にぴったりきて、なかなかいい感じです。 M1「結婚式 皆集うよ、晴れの日に ともにとわにアイ・ドゥー!アイ・ドゥー!」 "I do!"とは新郎新婦が誓う愛の言葉。 「昔の写真を見て泣いた・・」 結婚式が始まると舞台奥中央上に、ステンドグラスが明るくともりいかにも教会の雰囲気。 「まるで天国結婚は・・・」とアグネスが上手手前で客席にブーケのお花を投げます。亀有の時、最前列センターブロック上手側にいたしゃべーるさんが、投げられたブーケから落ちた水がかかったと報告して下さいました(^_^;)。ブーケは白いお花でしたが、生のお花だったのですね。見ていると上手ブロック何列目かのセンター寄りから、センターブロック上手寄りのあたりにブーケを投げていました。ブーケをキャッチした人はらっきーですね。
「I do!」の歌が終わると中央奥からダブルベッドがせり出してきて、マイケルはウエディングドレスのアグネスをお姫様だっこしてやってきます。 アグネスに「君の青春はある意味ではもう終わったんだ」と言うマイケル。「よくもまあそんなことが言えるわね」と怒るアグネス。男と女の気持ちの違いってこういうところにも表れるのですね。前向きな素直なマイケルの気持ちは、アグネスには伝わっていないようです。私には、アグネスが怒る気持ちはよく分かるのですが。 スーツケースを持って着替えに出ていくアグネス。アグネスの意図に気づいてあわてて着替えるマイケル。アグネスがいつ戻ってくるかとどぎまぎしながら、テケテケした音楽をバックにして礼服を脱いでパジャマに着替えるところが、せわしなくてとてもコミカルで楽しい。 最初妙なグリーンのナイトキャップをかぶり、客席から笑いが起きると「間違えました」とばかり脱いで、パジャマと同じ縞の柄のナイトキャップをスーツケースから取出し、「今度はちゃんとお揃いだぞ」と言わんばかりにキャップを広げて客席に見せるマイケル。このへんを見ていると、マイケルって育ちがよさそうな感じがします。 一度脱いだズボンをもう一度はくマイケル。パジャマの裾が長いので、前の方の裾を口でくわえて邪魔にならないようにしてはくところがかわいい。ナイトキャップをかぶって、何ごともないかのようにイスにふんぞり返って足を組むマイケル。アグネスの「ナイトキャップをかぶるの?」の一言に「ううん」と脱ぐのですが、もうすでにマイケルの方は頭がぐるぐるしている感じがして面白い。人のナイトキャップを指摘しておいて、自分はベールをつけたままというアグネスも面白い。 ベッドにピンクのハート形の「神は愛なり」の枕を見つけて「まあすてき、ママだわ、きっと」と喜ぶアグネスと対照的に、げんなりしているマイケル。この枕は亀有では四角くて緑か青色だったのが、変わったのですね。このあとまた二人が身支度を整えてベッドに入るのですが、マイケルが脱いだ靴下をイスの上にきれいに並べて置いているのが、なんだかマイケルらしい。 M3「おやすみ」 寝ようとする度にアグネスがマイケルに質問して、がっかりするマイケル。 ・・・なんだかもう、二人の初々しさにあてられっぱなしです。春風さんの恥じらったアグネス(でも実はしっかりしていそう)と、村井さんの緊張して動きが妙なマイケルがかわいいです。村井さんは今57才です。57才の村井さんが、あんな初々しさを表現できるってすごいなあと思います。 |
M4「僕は妻を愛してる」 朝になり、先に目覚めたマイケルがアグネスのベールを手に持って、妻への愛情をういういしく歌い上げます。 私は下手でアグネスが後ろにマイケルが前に立って、センターに向かって2歩ずつ歩きながら両手を広げていたダンスがお気に入り。またベッドに戻って「首ったけさ」と歌って眠るマイケルはもうもうっというくらい男のカワイさ爆発してます。
マイケルが寝ている間部屋の片づけをするアグネス。やさしいピアノの調べ。ベッドの上のマイケルは寝返りを打ち、ふとんから左足を出して、かゆいのか寝ながら太ももを掻いて客席の笑いをとります。下手の袖に引っ込んだアグネスが再び姿を表すと、なんとおめでた! M5「何かが起きた」 「赤ちゃんが足で私をやさしく蹴る」昔から続いている古いけれど新しい物語・・・おめでたの喜びを語る幸せそうなアグネス。心からおめでとうと言ってあげたくなるような、オーラが輝いているような春風さんでした。
具合が悪いと寝込んでいるマイケル。大きいお腹でそれでもかいがいしく夫の世話をするアグネス。「ほら、おてて通して」「ぶーぶー言わない」「気持ちいい?」なんだかお母さんみたいです。マイケルの病状を聞くと陣痛そっくり。アグネスの陣痛がうつったのでしょうか(^_^)。 アグネスが子供の産着を縫いながら母になる支度をしている間、どうしてよいかわからないマイケルは居場所がなくて困惑していました。でもそんなマイケルがいてくれたからこそ、アグネスは安心して母になる準備が出来たのです。 そうこうしているうち本当の陣痛がアグネスに起きます。マイケルはあわててパジャマから洋服に着替えます。この時の、村井さんの靴下のはき方がめちゃくちゃ早いのがビックリです。アグネスの気を落ち着かせるために、自分の小説を読んで聞かせているうち、ノッてしまってアグネスに怒られるマイケル。トレンチコートを着て、ベッドのアグネスの隣に子供用のカゴを置いて医者を呼びにいくのがなんだかまぬけで楽しい。
M6「待合室」 古いバージョンのI do!には入っていなかったマイケルのソロ。アグネスのお産の間やきもきしながら待つマイケルの心境がよく表れた歌。振り子時計のカチコチいうような音が演奏の中に聞き取れて、ひたすら待たされている時間の長さと不安をうまく表現しています。ここは完全に村井さんの一人芝居。村井さんの一人芝居は珍しいです。生まれたかと思って部屋を出ていったら、違ってがっかりして戻ってきたり、でも今度は本当だとわかると、握りこぶしの腕をぐっと引き寄せる仕草をして、医者か看護婦と握手するマイケル。喜びが全身からあふれています。
1月12日に市立病院22号室で長男が誕生。誕生の報告をするマイケルは誇らしさと嬉しさが爆発しているようです。 M7「愛だけでは生きていけない」 いきなりアグネスが洗濯物がいっぱいかかったロープを持って、下手から上手へ歩いていきます。子供の洋服がいっぱい干されているのを見ると、アグネスの苦労がうかがえます。舞台の上からはクマや飛行機や馬の絵が描かれた板がつるされ、両袖から大きなおもちゃの絵の板、巨大なプレゼントの箱が出てきて、マイケルがインディアンの羽の帽子をかぶり、ライフルのおもちゃや三輪車を持って現れます。 「愛だけでは何も子供に買ってやれない・・・」お金が足りないと言いつつ、それでも子供の世話に追われて親は楽しいと歌い上げる二人。春風さんがかなりパワフルで楽しく歌っていらして、たくましさを感じさせます。ふと気がつくとまたアグネスのお腹が大きい。「そんな、またなの?」とびっくりしつつ、それでも「楽しい」と言って引っ込むマイケルに客席から笑いがおきます。マイケルの戸惑いと、でも「楽しいんだも〜ん」という雰囲気がよく出ています。村井さん、うまいです。 4月17日に市立病院22号室で長女が誕生。誕生の報告をするアグネスの顔が輝いていて美しいです。 子供のおもちゃを片付けてくれ、僕には仕事があるからとアグネスに命令するマイケル。ちょっと待って、いくら仕事があるからと言っても、後かたづけは全部妻の仕事ですか〜?しかも、かたづけ方がうるさいとまで。マイケルは仕事の話を聞かせてくれますが、まるで面白くありません。アグネスはマイケルを後ろからおもちゃのライフルで狙ったり、インディアンの羽の帽子をかぶって「あなたの話、退屈」と言いながら三輪車に乗って去っていきます。「あの本は売れてたんまり金が入ったんだ」と言うマイケル。仕事があるからと言うマイケルと、家事と子供の世話に追われるアグネス、お互いゆとりがなくなってきて、気持ちがすれ違い始めます・・・。 ちょっとマイケルに反抗的なアグネスがかわいいです。三輪車がこげるって、春風さん体が柔らかいですよね。仕事仕事と言いはじめたマイケルの小憎らしい感じもよく出ています。 |
ピアノの暗〜い演奏。照明を落とした舞台には二人の姿はありません。両袖からそれぞれの声が聞こえてきます。なんだかいやなムード。 こんな会話が繰り返され、舞台の上には誰もいなくても、ピアノの不穏な雰囲気の演奏とあいまって夫婦の危機を感じさせます。すごいです。 M8「誰にも欠点が」 「完璧な人はいない」と歌いながら、お互いの欠点をリストにして交換しようと提案するマイケル。うわ−、恐い(^_^;)。マイケルが持ち出した黒い表紙の手帳のリスト(手帳というか…なんていうんでしたっけ、お経みたいに折り畳んだメモ帳)を開いて見せます。するとアグネスも赤い手帳のリストを持ち出してきて、マイケルの前で床に落としたらそれがまたダ〜ッと長い長い!なかなか止まらない!マイケルが自分の短いリストとアグネスのリストを並べて、長さを比べているのが面白いです。亀有ではなかったですね。アグネスのたまった鬱憤が感じられる1シーンです。 「靴下が見つからないだけでパンツ一枚で夜中に台所で怒鳴る」 相手への不満が爆発してもう止まらない二人。それでもパーティーに行かなくてはなりません。マイケルの隣で毛皮のマフラーを首に巻く時、毛皮のしっぽをマイケルの顔にバシっとヒットさせたのはアグネスの故意か偶然か。始めの頃ヒットしない時があったのですが、私はヒットする方が好きです。無理矢理腕を組んで歩いていく二人がなんだかもう形ばっかりで、目頭が熱くなります。 夫婦喧嘩PART1。春風さんも村井さんも容赦なくガンガンやりあっていて頼もしい。春風さんがうまいからか、やはりアグネスの気持ちがよく分かります。村井さん、「あなたはいつも早い」の後の「外出のしたく〜」の裏返った声と(村井さんはひっくり返ったお声がうまいです)「ハロウィンのカボチャ〜ふはは〜」の凶悪な感じがめちゃめちゃ憎たらしくてよいと思いました。
パーティから戻ってきたアグネスがベッドの横の腰掛け?(中が物入れになっている)に毛皮のマフラーを置いて部屋を出ていくと、そこへマイケルが入ってきます。マフラーを見つけるとなんだか坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで、ステッキにマフラーを引っ掛けて(ブスッとマフラーにステッキを突き刺す仕草が憎々しげで笑える)、なんとわざと床に落としてしまい、口笛を吹きながら部屋を出ていきます。 また戻ってきたアグネス、マフラーをマイケルがわざと落としたのに気がつき、これを機にバトル再開。 話の流れ上つい勢いで、マイケルが浮気していることがバレた時の村井さんの演技がなかなかです。「あちゃ〜〜、言っちゃったよ。しまったよ、どうするべ、あう〜〜!」っという感じが、表情からも全身からもにじみ出ています。 「その人、若い?」と聞き返すアグネスの声色がわざと明るいのがつらい。自分にはないものを持っている人にマイケルはやっぱり惹かれるのか。アグネスと本音で語りたくてもアグネスが否定的な態度でそれができなかったとマイケルが言うのを聞いて、私はマイケルが他の女性に走ったのもわかる気がしました。 M9「周知の事実」 ところが!マイケルは(浮気したのは)自分が悪いのではなく、「男は年とともに魅力的になる」「女はもうダメ!」などど抜かします。村井さん、夜会の時の燕尾服を脱いで蝶ネクタイにシャツ、ナイトガウンにシルクハット、ステッキ姿で踊りながら歌います。この時の村井さん、かなり勝手なことを言ってるくせに全然イヤミにならず、男のカワイさと色っぽさとカッコよさが爆発していて、私がアグネスだったら許してしまいそうで困ります(^_^)。 このあたり、中年にさしかかったマイケルの憎たらしさとかっこよさが、二幕を語る上で大事なところ、舞台の中でも重要な部分だと思います。「ブレヒト・オペラ」でも思いましたが、村井さんってインテリなもの書きの役とか、身勝手なんだけど男のカワイさがあふれたキャラクターうまいですね。
マイケルの言い分を聞いてアグネスがブチ切れます。真っ赤なドレスに85ドルもした極楽鳥の羽をあしらった赤いハデハデな帽子を取出し、踊り出します。 M10「炎のアグネス」 帽子の羽を揺らし、帽子のひもをグルグルぶん回し、腰を振るわ、胸を揺するわ、かなりイッちゃってます。「私だってまだまだこれからよ!」と。春風さん大奮闘で、初めて見た時あまりのパワーにどうしようかと思いました。カッコよくてキュートで、赤い帽子を戦闘服としてずっとしまっていた女性のやるせなさと迫力がすごくよく出ていると思いました。さすがです。
アグネスに謝ろうと思って戻ってきたマイケル。しかし話し合いは決裂。出ていくと言うアグネスの支度をマイケルも手伝いながら大げんかに発展してしまいます。夫婦喧嘩PART2。 M11「ハネムーンはおしまい」 「亭主がシャツに口紅つけたら」 終わりの方の歌詞で「I do!」の歌詞の一部がパロディのように「とわにさよなら」と入るのが皮肉がきいています。デュエットで「くたばれ!」ですものね〜(^_^;)。本当によその家の喧嘩を見ているような錯覚にとらわれるくらい、うまいな〜と思いました。 いつまでもハネムーン気分でいられないと思いますが…アグネスが小切手帳を持ち出しスーツケースを持って出ていくと、本気だと思わなかったマイケルが「ほんとに出て行く気か、戻ってこい!」とあわててアグネスを連れ戻しに行きます。このへんのあわてぶりがカワイくて、なんだかいい人だよなあと嬉しくなります。 アグネスを肩にかつぐようにして戻ってくるマイケル。「ハネムーンはおしまい」の繰り返しでまたバトル再開?かと思うと、途中からマイケルが「僕は妻を愛してる」を歌い、「誰にでも欠点はあるわ」と微笑むアグネス。この時の春風さんのはにかんだ笑顔が素敵です。そんなに早く許しちゃっていいの、アグネス?と思っていたのですが、やっぱりマイケルが自分を連れ戻しに来てくれたのが、アグネスはとても嬉しかったんですよね。お互いの気持ちを確かめあう二人。ラブラブですね(^_^)。 これにて一幕終幕!!(02.6.24) |
|
|